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2008年11月22日 悪い悪いカップルについての話

先日の産經新聞に「大麻はタバコと同様に有害」という変なタイトルの記事が登場していました。一見すると、大麻が有害なのは当たり前じゃないか、と思われるかもしれませんが、真実はこうです。すなわち、タバコも大麻もソレが持つ有毒さ加減は「同様」であって、どちらがより悪いモノであるとは一概に言えない。タバコは大麻と同じくらいの有毒物で、大麻はタバコと同じくらいの有毒物である、と、こういうワケです。すると、なーんだ、大麻ってタバコと同程度の害しかないんだーと思うモノもいれば、ええ! タバコって大麻と同じくらい有毒物なの!?と思うモノもいるでしょう。上掲の記事にはこのようなコトが書かれています。ちょっと長目に引用してみましょう。


ともあれ、大麻を巡る、特に若者たちの関心の背景として指摘できるのは、近年欧米でどんどん大麻解禁への動きが加速していることである。(中略)アメリカではアラスカ、オレゴン、カリフォルニア、ネバダ、ニューヨークなど12の州で、医療用の大麻が解禁されていて、しかも大麻の個人使用が犯罪にはほぼならないという状況にある(データは『大麻大百科』、大麻研究会著、株式会社データハウスによる)。


こうした続々の解禁。それは1995年にイギリスの医学雑誌『ランセット』に発表された、30年にわたる調査で、大麻を長期使用しても健康に問題はないとの見解が示されたことが一番大きいだろう。『ランセット』は、『ネイチャー』に匹敵するくらい格式の高い医学雑誌である。(中略)その後、大麻には依存性があることがわかってきた。使用経験者の9%が依存症に陥っていて、アルコールの場合の15%、タバコの場合の32%ほどではないものの弊害がある。
そしてもっと悪いことに、大麻のタールにはタバコと同じ発がん物質、ベンツピレンやベンズアントラセンが含まれている。(リンク:【正論】動物行動学研究家・竹内久美子 大麻はタバコと同様に有害


まとめます。
近年、外国では大麻が解禁され出した。ソレはさほど大きな有害性のないコトが判明したからであるが、しかしながら、その後に大麻の依存性が報告される様になった(「使用経験者の9%が依存症に陥っていて、アルコールの場合の15%、タバコの場合の32%ほどではないものの弊害がある」)。おまけに「大麻のタールにはタバコと同じ発がん物質、ベンツピレンやベンズアントラセンが含まれている」のであった。


私は薬物の専門家ではありませんので、この記事に記されている内容に如何ほどの信憑性、妥当性があるかについての断定は下せません。仮に、この記事が真っ当なモノであったとして、という前提の上でハナシを進めますが、大胆に言ってしまえば、タバコも大麻も同じくらい良くない、もしくは同じくらいしか害がないのです。大麻で逮捕されるならタバコでも逮捕されるべきだし、タバコが逮捕されないなら大麻でも逮捕されるべきではない、とこういうコトすら言えちゃうワケなのです。ソレは大麻をムチャクチャに濫用して気狂いになったヤツは、ソコらのヘビースモーカーよりも危険な存在かもしれませんが、斯様なコトは例外として一旦置いといて、ココでは一般論とでもいうべきモノを扱いたいのです。
現実的なハナシ、タバコと大麻の有害性が同一程度のモノであったとして、それではナゼ大麻だけが違法で、タバコは合法なのか。コレが最も厄介な問題かもしれません。純粋にその有毒さだけで合法/違法の規準を定めるのであれば、両方を合法化するか違法化するかしなければならない。じゃないとワケが分からなくなる。というか、現にちょっと分からなくなりかけています。──今更、タバコを違法化するなどというのは狂気の沙汰で、レーニンやスターリンの如き独裁者でもない限り実現不可能です。となると、最も穏健かつ妥当な判断として、大麻も合法化しちゃえ! ソレがイイ。だってタバコと同じくらいしか悪くないのですから。さすがにこの程度のモノで逮捕していたらキリがなくなる。お金もムダになります。
単に従来の大麻に対するイメージが偏向的であったために(またはタバコに対するイメージについて鈍感であったために)、こんなコトを申しますと変な風に見られるのかも分かりませんが、純粋に有害/無害の観点に立つ限り、大麻もタバコも同程度に有害なんだから、扱い方は同様にしなければいけません。


喫煙者は大麻常習者と同様に有害で、大麻常習者は喫煙者と同様に有害である。──一面的に見れば、という註釈付きであれば、たったコレだけのコトなのです。
有害なモノに対する処分方法は同じにしておかないと、一方の有害物を放し飼いにしておいて、他方を鉄鎖に繋ぐというのではあまりにもオカシイ。尤も、仕事中や運転中に一服するのと大麻を軽くヤっちゃうのでは、意識に及ぼす影響が多少なりとも違うでしょうから、その辺については何らかの考慮をしないといけないのかもしれません。…となると、コレは飲酒と同じような見地からの検討をも求められる必要がありそうです。そして言うまでもなく、お酒も一定の条件さえ満たせば合法です。


でも、改めて申すまでもありませんが、タバコにも大麻にも興味がないヒトであれば、こんなコトはどーでもいーのだ。私はただ上に載せた或る一文のためだけに今回の文書を綴りました。すなわち、私は以下のコトだけを言いたかった。
「喫煙者は大麻常習者と同様に有害で、大麻常習者は喫煙者と同様に有害である。」

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