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2008年04月11日 世界は我が手中に

欲せられず欲せず。意味が分かぬ。ガンジー主義の偏屈。下宿をしておるのですが、現在私は或る陋狭なる3号室の部屋に身を潜めている。すなわち1号室、2号室と来て3号室が当方の軟禁箇所。そうして隣から4号室、5号室と当然の如く続いていくのであったが、今春より何と!両隣(2号室、4号室)に存しておった気狂いの住人が去り果てたのでした。而してその隣の部屋、つまるところ1号室と5号室も元来空き部屋であった故に、歓喜すべき哉、1〜5号室までの室で生物が闖入してあるのは、私が身を投げ出す3号室だけなのである。祝!閑散。ただ、それほど古い建物でないにも関わらず、この入居者の無さは逆に不気味なのです。
両隣に気を遣う必要なく、更にその隣―両々隣をも遠慮の対象外とした。しかも一番上の階におります、よって最早同一建物内の住人が発する奇声、嬌声、猥雑なる騒音に悩まされるコトは限りなく無に等しい。加えるに“学生専用”の賃貸部屋であるから、向こう一年は安泰。そして一年後には私もココを出て行く。天晴。これこそが「The World Is Mine」の世界。無敵である。音の消えた世界。無敵である。
今迄どれほど隣人の騒音にストレスを蓄積してきたことか。俺のこの気持ち、リリース&フリーダム。意味が分かぬ。幾度深夜に管理会社へ苦情の電話を申し入れたと思っているのです!? 順を追って書いてやろうか。まず、私がこの空間に侵入してきて二日目、いきなり隣の2号室の奴が宴会騒ぎで夜半にはSEXの嬌声。オイオイ、随分と挑発的な歓迎ではないか。それ以後も幾度かの痴呆的馬鹿騒ぎ及びSEXにより私は管理会社に苦情の電話を入れる連鎖反応。そうすると2号室の野郎(偶然にも早稲田に設けられていた生ける屍サークル=スーパーフリーの主犯格と同じ名字のヤツであった)は逆襲を仕掛けてきやがったのです。すなわち、私が少しでもテレビの音を上げてみれば、壁を非リズミカルに叩きやがる。そこで私は決意致しました。
「そうか、そうくるか。それならコッチは徹底的に沈静してやるから、もしソレで貴様が狂騒すれば、俺は容赦せぬぞ!管理会社のヒトに頼んで注意してもらうからな。俺は怖いから直接注意しないが、管理会社にはそういうのを注意してくれるお方がおるので、そのヒトに目一杯懇願するからな!」
ここからは一進一退の攻防。手に汗握る睨み合い。が、この気狂いは翌年退室したのでした。祝!精神の病んだ奴淘汰。そして新たに潜伏してきたのが、異様に足音のデカい変人。お前、絶対泥棒できないわ、と誰もが思うデリカシー皆無の足音でありまして、イカしたロックバンドのベースも顔負けの低音の響き。ドスドス。コレを以てしても苦情の電話に値するが、私は動けませんでした。なぜなら「隣の騒音の件でお電話したのですが、あのぉ〜、隣のヒトの足音がですね、ちょっとうるさ過ぎて…」などと電話を入れたら、逆にコッチがアホみたいに神経質な輩だと思われて管理会社のモノから相手にされぬのではないか、との危惧が生じたからなのです。しかし床の振動が部屋伝いに感ずられるまでの凄まじさでしたから、考察の仕方によっては下の階の方がよほど迷惑であっただろうと同情致す。彼奴も今春で退室し去った。去れば去る、去らねども去れ。漸く訪れた平穏。祝!小太鼓退散。これが2号室の場合。
3号室。コチラは私がココに投げ入れられた時から今春まで同一の住人でありましたが、彼は単純にアホであった。夜中に決して高くはない歌唱力で大滝詠一サンの「恋するカレン」を歌い出したかと思えば、これまた深夜に洗濯物を干しながらエアロスミスの「I Don't Want to Miss a Thing」を外に向かって熱唱するといった具合で、さも己の歌唱力を町内に響き渡らせんとするかの如き野心を抱いていた、のかどうかは不明なのでございますが、兎に角、周囲を顧みず中途半端な歌唱力を披瀝されるのだから堪ったモノじゃない。コイツは奈良の騒音オバサンのフォロワーだ。だが、私は歌の害によって受話器を持ち上げるコトは避けた。ソコは許容した。しかし、コイツも定期的に夜中に宴会騒ぎのようなコトを主催するので、ソッチの方で5回くらい管理会社のオッサンに頼った。我一切を関知せず。だ、誰がヘタレやねん!


両隣が騒がしく、ソレに神経を尖らせて苦情の電話を申し入れる当方、そのオレが逆に隣人から騒音で苦情の電話を入れられたのでは元も子もない、斯く思慮しました私は、ココにおいて徹底的に沈黙を維持することに努めた。その結果、彼らからの苦情は一つも存せぬという最低限のマナーを厳守し得たのでありまして、実に優等生だ。その甲斐あって、今日、閑散とした空間でテレビの音も以前よりは2くらい上げておる。さすがに5もランクアップするワケにはいかぬので2の上昇に甘んじておる。資金さえ所持していましたら気兼ねせずにデリヘル嬢をお呼びしても良いのかもしれぬが、遺憾ながら貨幣も紙幣もない。平和勝ち得て金運勝ち得ず。こりゃ宿命だろうか。

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