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2008年04月07日 とても恐ろしい。

山崎まさよしの「One more time,One more chance」は、彼の代表曲でもあるが、やはり傑作なのである。M−1決勝でチュートリアルが自転車のちりんちりんネタの中で用いたコトも相俟って、私はこの曲を聴くと笑ってしまうのであります。


いつでも捜しているよ どっかに君の姿を
明け方の街 桜木町で
こんなとこに来るはずもないのに


いつでも捜しているよ
どっかに君の破片を
旅先の店 新聞の隅
こんなとこにあるはずもないのに


何故に斯様な歌詞にしたのでございましょう。捜している有り様がややズレておるように思われて仕方ない。微妙に危なっかしい男の香りも漂っています。
「向かいのホーム」や「交差点」までは納得できるのであったが、「明け方の街 桜木町」であるとか「旅先の店 新聞の隅」までとなると、ちょっと必死過ぎてこの一歩先には犯罪の予感を感ずるモノもいるのではないか。未練が半端ではないのでした。通り魔やストーカーの偏狭的思考と斯かる探究心―あえてそう呼ぶが―はおそらくどこかで重なり合うモノと思わずにはおれない。この男の中に存する「こんなとこにいるはずもないのに」という気持ち、このバネが吹っ飛びたる瞬間において、すなわち「ここにいるはずであるのに」へと変質致しました時に、犯罪は生まれるかもしれませぬ。そう思わざるを得ないほどの<怨念への変転を心待ちにしているかの如き情念(=未練)>をココからは感ずるのです。とても恐ろしい。
「One more time,One more chance」を欲する心情、コレが殺意を含む超能動的で猟奇的な探究心へと男を駆り立てぬようなコトが決して無いようにお祈りをしなくてはいけません。とても恐ろしい。
この曲がヒットした由縁は、以上の通り、男の<紙一重>の心情が衆目の関心を喚起せしめたからである…ってコトにしといて下さい。呉々も「死別した相手を想ってのことだろう」などとは言わないように。

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