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2007年11月24日 君の体温をありがとう

Tobira Album丸山眞男や吉本隆明に騙されるのはイヤですが、エドマンド・バークやRie fuになら騙されてもイイ。屈託がなく「ありのままの強さを教えてくれ」るからである。
待望のサードアルバムがもたらされた。Rie fu:「Tobira Album」


ここ最近のシングルの出来具合が突き抜けて素晴らしい有様だったので、来るべきアルバムも大いに結構なモノになるだろうという信頼を抱いておりましたが、やはりその通り、紛うことなき傑作アルバムのご光臨である。
「ツキアカリ」を聴いた時に愈々確信致したのでしたが、彼女には曇りがない。穢れもない。<異常なほどに>真っ直ぐなのであって、それでいて開放的な自由さ、気ままさを内包するのは、すなわち「Tobira」が開かれているからであろう。その好奇心、向上心、自立心が全てを受容し、しかし、その中に混じり入る有害物質は彼女独特の手法でもって排除されるのです。故に、ソコには迷いの侵入できる余地はなく、「自分なりのペースで あせらなくてもいい」という想いが前面に出ておりますコトで、今、自分が伝えるべきコト、表現すべきコトを決して逃さない感性が生まれるのであった。22歳―あろうコトか私と同い年!―の等身大の「今」が、このアルバムには保存されてある。
ロンドンの大学に留学し、そこで過ごした四年間を彼女はこの一枚のアルバムに昇華させ得た。そう申しても良いのではありませんか。それを象徴するかの如き秀逸なるナンバーは、今作の白眉となる「London」。“The air was dry in London”とRie fuが歌う時、その瞬間において、ソコにある情景は<彼女の想いによって>潤いを得る。極限するコトになるでありましょうが、この一曲を作りあげただけでも、彼女のロンドン体験は無駄では無かったと思うのです。


前作が比較的アグレッシヴな内容、自らに“強さ”や“明確さ”を吹き込むようなモノであったとすれば、今作は自らに宿る“穏やかさ”や“優しさ”を確認するようなモノに相当するのではあらぬか。前作で強き意志を確定致したのであったならば、Rie fuは今作でロンドンに於ける経験を相対化し、ソレを前作で得た強靭なボディに混在させ得るコトで、紛うことなき「自分の歩むべき道」を見出したのです。


なんたってこのアルバムの第一声が「君の体温をちょうだい」である。あらゆるモノを真正面から受け入れ、その全部を決して無駄にしようとはしない明瞭なる“成長するコト”、“先へ向かうコト”への喜びが顔を覗かせる。ああ、私も言いたい。これからも「君の体温をちょうだい」


ハイ、今回もRie fuの「体温」をシッカリと頂きやした。

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