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2007年11月01日 決して放棄できぬ10の音

近頃の私は音楽に対する偏食が甚だしく、より明確に其れを申せば、極僅かの人々の曲を拝聴するのみなのである。されば贔屓なるかといえば、果たしてそうでもありませんで、要するに徐々に音楽という土壌から遠ざかりつつあるのだった。
斯かる私の眼前に、例えば或る日の午前三時二十四分に“音楽の神”なるモノを名乗る白ヒゲの爺さんが陰鬱な表情でもって、二日酔いかと見紛うような調子で次のような命令を下しましたと致しまして、それに対する私の返答を考えてみんとするのが今回の目的なのです。つまり“音楽の神”なる村山富市元首相の如き眉毛を蓄えた喜寿の爺さんは私に述べたのであった。

神「キサマは音楽に対して、オッホン、あまりに傲慢じゃ」
私「ハァ・・・」
神「オマエはこ うお〜〜っほん!! 失礼 オマエなぞは音楽と絶縁しろ」
私「・・イヤ、それは、チョット・・・」
神「じゃあ、猶予を授けよう」
私「それよりも爺さん、何時だと思ってんだ。土足で勝手に上がり込んで」
神「貴様への猶予、それは今後10枚のCDしか手元に所持できぬ、コレじゃ」
私「『コレじゃ』って、アンタ…いやいや」
神「選べ、選ばぬならお前の持っているCDを全部没収するぞ さぁ選べ!」
私「・・・困ったなぁ」


と、斯かる事態を予め想定し申し上げるコトで、いざソレが現実のモノとなったときに焦らぬでも良いように、今、私は此処でその10枚を記し上げておきたいのである。要は「決して放棄できぬ10の音」。言うまでもなく某レコードショップのフリーペーパーや某音楽雑誌にあるような「無人島に持っていく5枚」やら「青春の1枚」のパクリ企画でありますが、今回私がやってみんと欲して実際にやったのはもっと究極的、より切羽詰まった状態での10枚。「コレだけは、コレだけは勘弁して下さいましぃ〜」っていう、どうしても手放せない10の音源を以下にあげてみるのでした。(アルファベット順・一言コメント付き)


All Things Must Pass「All Things Must Pass」/George Harrison
―ジョンでもポールでもなくジョージ。全ては移ろい行く。過去の中にも希望を見出すコトの大切さを想う。


DIRGE No.9「Dirge No.9」/WINO
―高校生の頃に一番聴き込んだアルバム。大袈裟だがこのアルバムには私の一断面が投射されているかの如く錯覚す。


K.AND HIS BIKE「K.AND HIS BIKE」/the band apart
―バイタリティにポピュラリティにオリジナリティにポシビリティーに・・・無数の「リティ」の融合。


Niagara Moon「Niagara Moon」/大滝詠一
―“遊び道具”としての音楽、遊びと職人芸の結晶。


Rock Bottom「Rock Bottom」/Robert Wyatt
―およそ私が知る限り最もエモーショナルな歌声の持ち主。それ故にココロを締め付けられる。


Saxophone Colossus「Saxophone Colossus」/Sonny Rollins
―ジャズに関しては赤子同然であるが、「名盤」と呼ばれる本作、とりわけ冒頭曲「St. Thomas」の1曲は決して放棄出来ぬ。


ソングライン「ソングライン」/羅針盤
―「歌」を主眼に置けば究極このアルバムと次のIdiot O'clockのみでも良い。山本精一の歌はじんわりと温もりの籠る湯たんぽのよう。


The Original Album「The Original Album」/Idiot O'clock
―Idiot O'clock唯一のアルバム。「歌」で気持ちを伝えるコトの神髄と言おうか、これはヒトが持ち得る限りの感情の真空保存。


The Rotter's Club「The Rotter's Club」/Hatfield and the North
―怠惰・儚さ・希望・憂鬱、それらが離散集合する時、そこにかけがえの無い「美」が生ずることを見る。


Trout Mask Replica
「Trout Mask Replica」/Captain Beefheart and the Magic Band
―乱暴で猥雑で凶暴、緻密かつ整然かつ明確。境目不詳の恐るべき謎がココには存す。


色々と検討してみたのでありましたが、やはりどうしてこの10枚だけは放棄できぬ。今後、より音楽から著しく離れたとしても、ここにあげた10の音は、永久かつ不変に愛聴してゆくのではあらぬかと自覚致す。爺さん、いや神様、以上が如何様に考慮しても捨てられませぬモノたちでございます。宜しいでしょうか?

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