« (害を)産む機械 | もどる | 困惑と危急 »

2007年09月27日 日が昇りはじめる

たいようのマキバオー1巻満を持して、というべきなのだろうか。待望の復活!?
「たいようのマキバオー」


いやぁ〜堪らんなぁ。この雰囲気。この作風。この光景。
私が今まで最も読み込んできた漫画は間違いなく「みどりのマキバオー」だが、その続編と位置付けられる今作は、前作の流れを引き継ぎながらも、新たな要素が随所に加わっている。ガチでマキバオーを描いている時のつの丸は「鬼才」に豹変するな!
まー、コレは余談だが、仮に好きな漫画家を三人あげろといわれれば、私は躊躇することなく「新井英樹、古谷実、そしてつの丸」と答える。この中で一番古くから親しんできたのがつの丸だ。


さて、この「たいようのマキバオー」であるが、ストーリーは高知競馬、すなわち地方競馬を中心に展開してゆく。地方競馬が抱える財政面、人気面、経営方針、馬とヒトの置かれる立場、などを問題として取り込みながら、そこで逞しく(?)生きようとする人馬のお話。
主役は(マキバオーの半妹)ミドリコの最後の産駒「ヒノデマキバオー」(通称「文太」)。姿はもちろんマキバオー・ミドリコとソックリなあのようなモノです。幸いお母さんに似ず気性は穏やか。口癖は「んにゃ」。脚部不安のため中央で走ることが適わず、高知に来たワケありのお馬さん。伯父さんのマキバオーとはかなり異なる境遇なんだ(ちなみに文太の父は「タマブクロス」という散々な名前です[タマモクロス→タマブクロス そりゃあ無いだろうに]。つの丸らしい名前だけどねぇ。マキバオーは「タマーキン」だったし)。
その「文太」の主戦ジョッキーは福留隼人(「ハヤト」)。あまり詳しくは言及しないが、彼もやはり地方ジョッキーによくある中央競馬に対するコンプレックスを抱いている。性格は菅助なんかよりもよっぽど負けん気が強いが、しかし内には優しさを備え持つ典型的な「土佐の男」という感じ。って私の勝手なイメージだけど。実際に高知人が負けん気の強い性格かどうかは定かでない。
この文太とハヤトのコンビが、またグッくるものを持っている。マキバオー=菅助のコンビに負けず劣らず、(作中の)日本競馬の歴史に名を残すような存在になることを期待したい。


菅助といえば・・そうそう菅助が出てくるんだよ。いつの間にか中央のトップジョッキーになってる。前作から10年後の世界が舞台となっているが、10年あればそうなるのね。「マウンテンロック」なんていうムチャクチャクールな馬を乗りこなしちゃう渋いジョッキーになってるんだから驚く(ちなみにマウンテンロックの父も「ホーケィナイナー」という散々な名前ですが。やはりつの丸・・・)。
有馬記念で勝った後に号泣してた管助が、泣きながら「たれ蔵」にしがみついてた菅助が、いつのまにかリーゼントになり、JCダートを勝っている。10年だ。月日の流れはヒトを大きく変える。嶋島なんか「マキバオー世代」なんて言われてバカにされるホームレスみたいになってるし。・・フフフ。


「みどりのマキバオー」が好きだったヒトには是非とも読んでもらいたい作品。好きでなくても読めますが、前作を知っていた方がより楽しめることは確か。
例えば、102ページの菅助のセリフ。「いや…よくわかりますよ…………」
前作を知っていれば、この言葉と結びつく様々なシーンが蘇ってくるはずだ。ちょっと泣きそうになっちゃう。「飯富厩舎」は大変だったからなぁ。
その飯富さんは出てきてないけど、どうなったのだろうか。いずれ出てきて欲しい。


ああ、何やら取り留めの無い懐古話みたいになっている・・・
とりあえず最後にこれだけは付け加えておく。
「みどりのマキバオー」にも「たいようのマキバオー」にも見られる共通点は、非エリートのエリートへの対抗である。マキバオーも菅助も決して良いとは言えない環境や条件の下で這い上がって来たじゃないか! きっと文太とハヤトも・・・ 今度の方が条件は過酷だぞ。(でも、血統的にはマキバオーも文太もかなりイイってコトは内緒)


今のところ、文太にマキバオーのような魅力的な強さを見るコトはできないが、多分この馬の素質は高いと思う。脚に爆弾を抱えているけど、“週刊10馬”などを見る限り、これは結構なモノじゃないかしらんと期待してしまう。・・・が、そう簡単にサクセスストーリーを描かないのがつの丸。つの丸は「苦労と苦悩を突拍子もないギャグを交えて描かせたらピカイチの漫画家」だと私は思っているのだが…
だから、文太もハヤトも苦しみながら上昇していくんだよね。そして地方競馬も―個人的にはそういう願いをこの作品に託したいのです。(だから「ヒノデ」なんだよな?)


まだ一巻が出ただけなのに、いきなり文太=ハヤトに惹き付けられてしまった。このコンビが大きなレースを勝ったら、正直、私は号泣するかもしれん。ウウぅ・・・ 現在22歳。
だから、お願い、打ち切りだけは勘弁して下さい。それだけはマジでお願いします。来年の七夕にこの願いを短冊に書きますから。本当にそれだけはナシよ。ね。


おまけ:14-15ページの最初のコマでベアナックルの顔が吹き出しに隠されて「あれ?」となっているのが好き。そしてこの2ページで前作を説明し切っている。凄まじい。

« (害を)産む機械 | もどる | 困惑と危急 »