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2007年01月22日 過去との交叉点

宙の淵fra-foaの1st「宙の淵」


非常に思い出深い一枚である。fra-foaは高校時代、かなり思い入れのあったバンドだ。


所謂「青春」時代などというものは、いかにも青臭くて、感傷的で、陰鬱で不安定なのに、そのくせ妙な期待や淡い幻想を抱いているものである。
私にもそのような時期はあったのかと顧みても、どうも思い当たるフシがない。というのも、私の高校生時代はダシを取り忘れたみそ汁のようなモノで、実に味気ないものだったからだ。何かに夢中になる純粋さや青臭さも無ければ、感傷的にさせられるような出来事もなかった。言ってみれば、欠伸ばかりの平凡であった。
しかし、確かに自らの置かれている状況については自覚的だった。それ故に、自分自身のありきたりな日常を怨嗟することもあった。だが、それも「自業自得」という簡素な一言で我が身へと跳ね返ってきたに過ぎない。当然の帰結である。


そしてfra-foa。
彼らは、というより三上ちさ子(ちさこ)は、生と死を逃げることなく捉え、今の自分の位置を確認する強さと、生きる意味を只管に自身に納得させようとする強烈な意志に満ちていた。聴き手を飲み込まんばかりのその圧倒的なエネルギーに、私は自分に全く欠けているものを見た。外見などかなぐり捨てて、一直線に苦痛を吐露するそのスタイルに、ただならぬものを感じ取った。
それはある意味で、私が思い描いたような「青春」の一断面に違いなかった。
だからと言って、典型的な幼さみたいなものを感じられない所が、fra-foaの最大の魅力であった。


fra-foaは結局、アルバム2枚を出しただけで解散してしまったが、私はこのアルバムがあるだけでも良いと思っている。
音楽的には次の「13 leaves」の方が安定感があるのだろうけど、そこからは伝わってくる印象が限られているような気がしてならない。
対して、この「宙の淵」は、三上ちさ子の思いが全てぶつけられたようで、いつ聴いても胸が動く。そして、ダシのないみそ汁に浸っていた頃の感触も蘇ってくるようで、どことなく変な気持ちになる。それは決して心地良いものではない。だからこそ、私はその“変な気持ち”と完全に訣別できる日まで、このアルバムを大切にし続けていかなければならないのだろう。ずっとそういう気がしてならないのである。

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