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2006年08月22日 最後の音楽

Trout Mask ReplicaCaptain Beefheartというヒトは天才過ぎたのだと思う。
天才過ぎて天才過ぎてどうしようもなかったから、「Trout Mask Replica」などという化け物アルバムを作ってしまった。彼がやりたい音楽を、小細工なしに、真っ直ぐに表現したら、こんなアルバムができてしまったのだろう。


ブルースとかフリージャズとか、この際そんなものはどーでも良い。重要なのは、このアルバムの果てしなくデカい全体像だ。


このアルバムに詰め込まれた莫大な音楽的要素。それもおそらくはCaptain Beefheartの一部に過ぎない。
音楽などというのは、彼にとっては、単なる表現手段の一つに過ぎなかったのだろう。しかし、彼のような天才が音楽を好き勝手にやってしまうと、こんなコトになってしまう。
これは歴史の驚異的な一面を記録した音源だ。


そして彼をとりまくメンバーもまた半端ではない。このアルバムに収められている28曲、全てにおいてまるで即興的な感を受けるが、よく聴いてみると実は緻密な演奏がなされている。


ワンフレーズ、どこを取ってみてもスキがない。
この手の音楽というのは、大抵無駄で埋め尽くされているのがフツウなのだが、このアルバムだけはほとんど無駄がない。その為このアルバムを真剣に聴こうとすると、相当の疲労を伴うことを覚悟しなければならない。


Captain Beefheartが音楽から離れてもう何年も経過するが、こんなアルバムを残した以上、彼が音楽を続ける意味もないだろう。
そして、音楽自体も、この辺りでひとつの終わりを迎えているのかもしれない。
少なくとも、これは、何かが行き着く果てにある終わりの音楽である、というような雰囲気がプンプンと漂って来ている。

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