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2006年04月09日 繋がりを求めて

先々週から連載が始まった古谷実の新作「わにとかげぎす」
今まで古谷実は中高生を主役に据えた作品を描き続けてきたが、今回はちと違う。
32歳の警備員が主役の漫画だ。
とは言っても、やはりそこは古谷サン。この男が屈指の社会不適合者。
主人公の人格自体は、彼が一貫して描き続けてきた人物と何ら変わるものではないだろう。


今のところ知ることができる、おおまかなアウトラインはこうだ。
32年間ずっと無気力でいつの時もグーグー眠り続けてきた男、富岡ゆうじ。時間さえあれば家で眠り続けていた富岡は、近頃思い始める。今までの自分の人生は何だったのかと。振り返っても振り返っても蘇ってくる記憶は眠り続ける自分の姿ばかり。
自分の過去を嘆きつつも、とりあえず一つ願う。友達が欲しいと。
しかし、これといって社会との接点がない彼に、何かしらの出会いなど期待できるわけがない。
社会と繋がりたいと思いながらも、どうしても現状から抜け出せずに葛藤していたその時に二通の手紙が届く。一通目は職場に、二通目は自宅に。
差出し人不明のそれには共に"お前はもうすぐ死ぬ"的な内容が記されており、富岡は非常にビビる。つまらんイタズラだ、と思いながらも内心は凄くビビっている。


と、ここまでが現在明かされているストーリーだ。
富岡が今後どのような形で社会と結びついていくのか、謎の手紙の差出し人とどう関わっていくのかが当座の注目点になるだろう。


元来古谷実という漫画家は、闇を描くことに長けたていると同時に、所謂ダメ人間を描くことにも長けている。
その古谷実が、今作「わにとかげぎす」でどのような闇を描き、この一人のダメ人間をどう仕立てていくのか、実に興味深い。


私自身、決してこの男と共通点を持たないと感じているわけではない。
それゆえに、この物語がどう展開していくのかを客観的に見つめることは、やはりできないだろう。
漫画という域を超え、自分の内側を抉られるような作品になっていきそうな気配がしている。

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