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2009年06月30日 何かが無い!?

ヒメアノ〜ル3巻古谷実「ヒメアノ〜ル」の3巻。
不思議な漫画です。バランス感覚がまるで分からない。本作もヒトが殺されるという“一見”重いシーンの背後で蠢く二十数年来童貞だった男の初恋という、最近古谷氏が描き続けている内容の繰り返しと言ってしまえば、確かにそうなのかもしれませんが、でも今回はどこか違っています。それは多分……この作品にはかつてないくらいのぶっ飛んだ快楽殺人者がいて、彼が物語に絡んできているのですが、その絡み具合というか、存在感というか、すなわち特異な殺人者がいる割にその緊迫感が決定的に感じられないのです。それが先に「“一見”」と書いた理由です。どこか空白を感じる世界観、埋められるべき場所が埋まっていないような空虚感、「日常の中の非日常」の非日常、実態の見えないコトへの違和感が募りに募る作品だと思います。
この違和が何であるか──作者が生み出した意図的なズレのようなものなのか、はたまた期せずしてそのようになってしまっているのか、もしくは受け手であるわたしの誤解か…… 現時点ではこの物語がどのような方向に進んで行くのかが分からないので、まだ何とも申せませんが、もし仮に本作もコレまでと同じような路線で、同質の展開が用意されているのだとすれば、この「ヒメアノ〜ル」という漫画、明らかに何かを欠いた危険な作品であると思います。
・・・ただし、その欠落が良いものなのか、それとも悪いものなのか、ソレについては物語の完結を待たねばハッキリとした断定を下すコトができないのでしょうけど。

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