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2009年06月10日 傷口の中の美

たいようのマキバオー8巻つの丸「たいようのマキバオー」8巻。
どんどん円熟味を増してゆきますね。つの丸という漫画家は、今、一番面白く競馬を描けるヒトかもしれません。
この巻での主役は文太ではなく、アマゾンスピリットです。おそらく文太のライバルとして、今後本作においても重要な役割を握るであろう一頭の馬の能力の高さ、不気味さ、不敵さ、彼特有のプライドを、つの丸氏は丹念に描いています。
言うまでもなく、今回の白眉は「砂の頂上決戦」ジャパンカップダートでしょう。レースの展開については割愛されて頂きますが(というか、ココではまた決着がついていませんが)、各馬の駆け引きを映しながらも、レースの流れにムダが無く、流れるように一気に進んで行く内容は、正直なトコロ「みどりのマキバオー」の頃とは比べ物にならないくらいの現実感があります。最後の直線に入るまでの進め方は、これくらいの方がわたしは読み易くて好きだなぁ。


そしてもう一つ。「芝至上主義」というキーワードが出てきたのも、今回の(もしかすると本作の?)キーワードでしょう。これはダートを主戦場とする馬やその関係者、そして地方競馬を扱う限り避けては通れぬポイントのように思われます。作者のつの丸氏は、本作において競馬の面白さ醍醐味だけではなく、その陰にある(日本競馬界の)問題点をも同時に描き出そうとしているようです。競馬を愛しているが故のメッセージとでも言いましょうか。表面的な美しさの奥にある傷口を、彼は大きな想いで包み込もうとしているかのようです。ただ、その傷口の中にも隠された「美」はあるのでして、些か大袈裟に言ってしまうならば、本作「たいようのマキバオー」とは、そうした隠された「美」を抽出するという大胆な作業に取り組んでいる漫画なのだと思います。まぁ、詳しいコトに関しては書店で本作を購入して頂くのが一番なのです!!
このような漫画こそ、是非とも長続きして欲しいと願います。

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