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2009年03月09日 方向音痴の世界

わたしは方向音痴ですから、ほとんど東西南北を判別できません。方向に音もクソも無ぇんだから“音”痴は違うでしょう、なんて思うコトもありますが、その点はまぁ置いときましょう。
さて、方向音痴のわたしからすれば、オッサンなどが会話のなかで「北はアッチだから〜」などとサラリと言ってのける様を稀に目撃するに当り、少なからず当惑致します。磁石も地図もないのに、ナゼ当たり前の如くに方角を指示できるのでしょうか。──イヤ、しかし、今回に限ってはその点も百歩譲って別の場所に投げ捨てて置きましょう。一番厄介な問題はこうなのです。すなわち、方向音痴からすれば、方角が分かったところで目的地には辿り着けねーぜ、ベイベー!というコト。
「この道を真っ直ぐ行って、突き当たりの交差点を西側に行けば○○ビルがあるから、その横の路地を左に曲がって二百メートルもすれば着きますよ。」などと飄々とした顔で説明されましても、まったく意味をなさないのです。まず、最初の西側云々でどちらへ行くべきか知らないし、仮に西側が分かったところで、「その横の路地」がどの道を差しているのか、確実に判別できるとは限らない。コレが我々の属する“方向音痴の世界”なのです。
所謂フツウのヒトたちは、自分の感覚を「通常」のモノとして捉えていますので、目的地への行き方も“ソッチの世界”に共通のコトバで伝えてきます。コレに対処できないのが方向音痴の世界の住人なのです。つまり、言語感覚が根本的に異なる。フツウのヒトたちであれば、多少の土地勘がある場所で迷ったとしても、「駅はアッチだよ」と言われて、適当に「アッチ」へと歩みを進めれば何とかなるのかもしれません。が、方向音痴の世界の住人は断然そうではない。当人は言われた通りに「アッチ」へと向かっているつもりなのに、いつの間にか「アッチ」への道から逸れて「コッチ」へと舞い戻って来ているなんてコトもしばしば。


──ココに三角形ABCがあります。わたしのように極端な方向音痴になりますと、底辺BCの中点Mから辺ABの中点Oへと向かいたい時であっても、どういうわけか終局的には辺ACの中点P付近へと行き着いてしまうのです。真逆! 確かに最初はOへと向かって移動し始めるのですが、どこでどう間違えたか、ACの方へと方向転換してしまうというコトになりまして、甚だ間抜けで面倒な事態に陥ってしまいます。コレが方向音痴の世界の住人。
従いまして、わたしはこのような具合ですので、他人に道を訪ねられようものなら非常に丁寧に説明し申し上げます。というのも、わたしは己が属する極端な世界の基準で物事を考えてしまいますので、「ココを真っ直ぐ行って、左折してちょっと行けば着きますよ」なんて簡便な説明は怖くてとてもじゃないけど出来ないのです。もしかするとこのヒトもわたしと同じく方向音痴の世界の住人かもしれないじゃないですか! ですから、丁寧に説明しておかないと目的地へとスムーズには行き着けないのではないかと、アノ恐怖感にわたし自身も苛まれてしまうのです。いい加減なコトは決して言えない。道に迷う情けなさ、歯痒さを心得ていますから。少しでも自信の無いときは、率直に「この辺りには不慣れですから……スイマセン」というより他に方法はありません。というか、方向音痴の俺に道を聞くな。
──ところで、“自分自身の進むべき方向が覚束ないヤツが、他人に何を教えられるというんだ?” 教師風情の輩が吐きそうなこのセリフ、実は人生の教訓めいたものなどではなく、広く道案内一般に対しても適用できるモノのように思われますが、如何でしょう。

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