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2008年10月08日 仁王立ちする悪魔

中高生に1箱千円が効果的=禁煙分岐点、「大人より高い」−9万人調査・厚労省


たばこを吸う中学生、高校生を禁煙させるには、1箱1000円以上にすることが効果的との研究結果を、厚生労働省研究班(主任研究者・大井田隆日大医学部教授)が8日公表した。同教授は「分岐点の価格が大人より高い可能性がある。未成年者の喫煙率をゼロにするため、思い切った値上げが必要」としている。


タバコに関わるモノは、一切が悉く気狂いと化してしまうようであります。彼らは値段の問題として、愚かなる経済的視点から効用を明らかにするといった精神的荒廃を見せるに至った。世の中資本次第で如何様にでもなるといわんばかりの、ある種の極限にまで達した合理主義的思考!
私はタバコを心底嫌悪するモノですが、極端に急激な値上げには反対をしておるのでした。ソレは低劣な喫煙者を庇ってのものでは毛頭無く、そうした人為的な価格統制が及ぼす諸種の悪影響を思ってのコトであり、タバコに関わらず如何なる商品であっても、原材料の不足とかといった事態とは無関係の事実に由来して、突発的に価格を操作するのは芳しくないって心理的背景。上げるなら漸進的に。


それで…… 空虚な糞餓鬼の喫煙問題について、お金の次元で解決を図ろうとするが如き事態に至っては、もはや一つの末期的症状を呈しているとしか言いようがなく、おそらく彼らは裕福な中高校生の喫煙に対しては、経済学的な視点から容認するかもしれん。──何でも価格及び市場の操作によって解決ですか! そもそも「未成年者の喫煙率をゼロにするため」、「1箱1000円以上にすることが効果的」との見解は意味不明でございましょう。一箱千円にするコトで中高生の喫煙率が「ゼロ」になると想定する御目出度い発想には脱帽せざるを得ないんだが、コレは我が国が憲法9条を護持してきたが故に、戦後六〇年の間、実に見事な平和が維持されて来ったと本気で捉える論者と表裏一体をなす脳天気な見識であります。9条が存しなければ、平和ももたらされぬのか。千円にしなければ、喫煙率はゼロにならぬのか。彼らは一様にその背後にある力や意志…斯かるモノへの配慮が欠けている。ソレは徹頭徹尾他人任せな視点でして、言うなれば、「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであって、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」との中学生の作文レベルの代物と一歩も変わるトコロのない決意表明だ。この場合、主体は己にあらず。
而して話を再度振り戻せば、連中は中高生の喫煙問題にしても、「もはや昨今のガキ共は言っても聞き入れるだけの能力がないから、経済的制裁でコントロールしてやれ!」との無機質な見解を放り投げるのみではないか。(これを逆転させた発想が現行憲法の前文であるコトは、猿でも解せる。「オレたちは強く信じてるから、アイツらも信じてくれるだろう」ってな根拠不在の良心に基づき、他国をまぁコントロール可能なものであろうと本気で思慮する無鉄砲さ!!) 畢竟するに、自らの意志でどうにかしてやろう!という次元に視点は置かれず、間接的なモノに依存しているだけなんだ。ソレが金銭的に独立しておらぬ中高生に対する「1000円」なる価格として現出するにしろ、他国の「公正と信義」として表明されるにしろ、いっさいは楽観的に決断されてゆく。


タバコに関していえば、安いから彼らは吸うのか。アンタら、立場的に「未成年であっても購入できるだけの金銭的余裕があれば、別に吸っても良いよ」とは言えないでしょ? にも関わらず価格の問題として処理しようという馬鹿げた見解を披瀝する厚労省の研究班。──民間の研究グループではないのだ! 平和が9条のおかげではなく、事実上米軍という一種の「強制機構」の存在に負うトコロが大きいのを覆い隠します9条神格化論者と、喫煙の問題を経済的な「強制措置」で解決可能なモノと看做す哀れなる研究者。恐るべきほどに崩れ去った一面生しか見ようとはせぬ人々よ、前者にあっては現実感が、後者にあっては公徳心もしくは遵法精神がまったく欠落しておる。まるでどこぞの論者が好き好んで主張致すように、「戦後民主主義的特徴」を兼ね備えたが如き雰囲気、彼らは二つで一つ。この両者を逆立ちさせて握手させれば、きっと素晴らしい景観が拝めるのだろうけど・・・

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