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2008年09月17日 やっちまったなぁ!!

およそ一年ぶりくらいに『文藝春秋』を購入したのであった。
今月の分は実に芳しい、また微笑ましい。
中心は毎度お馴染みのメンバーで、結論ありきの「東京裁判」検証。…が、斯様なモノはどーでもいー。ありきたりにどこぞの宰相を攻撃したモノも掲載されてある。斯かるモノもどーでもいー。石油と食料危機に関する威勢の良い論者の見識も披瀝されておる。まぁ…… 白洲次郎を扱いました文章は少しだけ興味深かった。タモさんが赤塚不二夫との思い出を綴り上げたモノも載せられてあって、コレは読み易くて好印象。文章にも「タモリ」が出ておった。それで、最も惹き付けられましたのは、会田弘継というヒトの記した「漱石・ハイエク・江藤淳「こころ」の絆」って文章。内容は以下の如し。
日本文学研究者のエドウィン・マクレランは、ハイエクの下で博士論文を執筆したのですが、彼はその題材として夏目漱石を選択致したというのです(『漱石、ある日本の小説家──序説』ってなテーマであるとのコト)。しかしながら、当時(一九五七年)の欧米圏における漱石の認知度はほぼゼロに等しく、また、まともに英訳されたモノも存せぬという状態でありましたので、マクレランは感銘を受けた『こゝろ』を自ら単独で英訳し、其れをハイエクに見せたのである、との由。──そうして英訳された『こゝろ』に目を通したハイエクは、「激しく感動した」と述べたのだった。
筆者の会田氏は、ハイエクが『こゝろ』の如何なる点に感動を覚えたかを、彼の私生活の検討を通じて解説してゆく…
あと、マクレランと江藤淳の関係についても記されてある。が、私はハイエクの部分に多大な関心を寄せてしまった。なるほど、ふむふむ。かなりハードな私生活を送られていらっしゃったのですね。


他には、アノ「品格」の藤原正彦氏の“新連載”と銘打たれた「名著講義」なるモノまであって、コレは氏が普段授業でやっておることを文字に起こしたモノらしい。学生との対話形式になっていて、指定された名著を読んで来た学生と藤原氏との間にて、種々の意見交換がなされてある。些か実際の講義をそのまま文字にしたとは思えぬのであるが、多分斯様なコトをお話されているのであろう、ってのは解せる。初回は新渡戸稲造の『武士道』 正直なトコロ、何箇所か笑ってしまった。以下にその一例を。
──最近の親は子供に甘い、時には子供を叩くようなコトも必要だというコトを知らぬ、また叩こうにも、近頃の親は叩き方を知らぬ、それは教師とて同様、そのような連中が闇雲に子供を叩くと、ケガをさせてしまうおそれがある …実は子供を安全に張り倒すコツがあるんです、ソレは指の第二関節より先の部分でバシッと云々……
こういうコトを真剣に喋っている。コレは色んな意味で楽しい。いずれコノ連載をまとめて本にしてくれないかしらん。


今月の『文藝春秋』は総合的に宜しい。総合力では相当なレベルにある。微笑ましい。
あと、世界の美女特集もあるよぅ!

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