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2008年03月31日 見せかけの花束はいらない

古明地洋哉物心ついた時分から暗いモノが好きであった。


暗い詩
暗い物語
暗い文章
暗い絵
暗いオチのコント
そして、暗い音楽


そういったものを好んで受容してきた。それは今でも変わらない。
「孤独」という言葉に、特に強く惹かれた。―惹かれている。
其処に何が存するのか、何が見えるのか、何を想えるのか、何を感ずるのか…それは結局いつまでも知る由のないことなのかもしれない。それでも、己の中の何かがそれへの共鳴を続けるのであった。


古明地洋哉は「孤独」を表現する音楽家と言って良いと思う。いや、むしろ、彼の場合はそうするより他に自らを具象化する術を知らなかったのではないかとさえ感じさせる切実さを伴う。彼は、真摯に、日々と、世界と、そして自分自身と対峙することで、そこに根を据え付けているはずの「孤独」を隠匿する行いを絶対的に拒むに至ったのだ。それを抜きにして己の感情を表現することに、どうしようもない欺瞞を感じ取ったのであろう。故に、それを歌にした。
古明地の綴る詩は、他人が敢えて振り払おうとするものを、換言すれば、見て見ぬ振りをしようとするところのものを抉り取って、人々の眼前へと曝け出すような、そうした<攻撃的>な面すらを包含する。だが、而して、そこにこそ偽りなき表現者【アーティスト】としての天分の才を垣間見れるのだ。


古明地洋哉は、十年後、二十年後にも確実に裏切られぬことのないであろう心象を果敢に具現化する音楽家なのである。(どうしても文章にして残しておきたい感慨があった。彼の魅力が少しでも伝わることを祈りつつ…)

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