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2006年08月19日 ノンフィクションの音楽

Cop/Young God/Greed/Holy MoneySWANSの初期のアルバム2枚を収めた2枚組の「Cop/Young God/Greed/Holy Money」。
おそらく呪術師の部屋ではこのCDが鳴り響いている。私にはそんなイメージが思い浮かぶ。
どうしようもなく退廃的な部屋の中で、黒いマントを纏った薬物中毒みたいな長髪の男が鬼のような形相で佇んでいる。
その光景こそがSWANSの音楽だ。


シンプルながらも恐ろしいほどに重く鈍く響き渡る音。
ひたすら繰り返される単調であり、無機質なサウンドの連鎖。


日本語の「音楽」とは本当に巧く言ったもので、SWANSほど「音楽」できるバンドは、そういるものではない。


何をどう表現するかということは、限りなく重要な問題で、人類に一生問われていくであろう。
SWANSは、退廃や暗黒や呪術という言葉を、これ以上無いというほど見事に音で表現している。
だから、SWANSの曲を聴くと、それがどんなに鈍くても重くても単調であっても無機質であっても、「音楽」できるのだ。
彼らの曲をどう受け止めるかはヒトそれぞれだろうが、私はこんなに真に迫るほどの迫力で、混沌とした部分を表現した音楽をほかに知らない。
美しくなくて良い。整然としてなくて良い。綺麗でなくて良い。大切なのは、何かの一部分を克明に描き出すことなのだ、と改めて感じさせてくれる音楽がここにある。

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